たくらまかん(1〜10)


バッタをば笑う翁の背後から     宮本きゅういち
冷やしトマト祇園精舎は水の中      兵頭 全郎
居候をするもさせるも偉大なり      壷内 半酔
かなしくなると花芽をつけるカスタネット 山田ゆみ葉
零下の鉄にぎらせ告知は続く       松本きりり


広島忌ワタシAV女優なの      宮本きゅういち
型紙は斜め亀甲菱くずれ         くんじろう
監督の押せばぺこんとなるところ     井上しのぶ
鬼ごっこ知らない人と気付く迄      富山やよい
電極が伝える山椒の怯え         山田ゆみ葉


力学はフェンスの前の落し物       山田ゆみ葉
貝殻を集める鳩のような舟        森  茂俊
81階を踏み抜き昨夜の伊勢まいり    高田 銀次
病み上がりのハンガーへ春を吊るす    松本きりり
鯛焼きや冬田で殺されしこと幾多     石田 柊馬


西瓜踏むたしかにかしたムー返せ     兵頭 全郎
産院の庭で焚書の人だかり        吉澤 久良
銃弾の跡形もなし公衆便所        小林満寿夫
無印は老人会の名で走る         壷内 半酔
水中で泡吹くレンガですきみは      石田 柊馬


半島に掲げるズボンプレッサー      富山やよい
死に急ぎしたものの嘴          石田 柊馬
枢機卿いま腋シューをされました     井上 一筒
ベランダに晒す毛深く痛きもの      吉澤 久良
密造酒やがて醜女の時雨れるか      きゅういち


尼5名象を担いで帰られた        井上 一筒
狸が走っている 股間も         石田 柊馬
国王の腕の長さを諮問せよ        井上しのぶ
幸せのアクアリウムに辿り着く      蟹口 和枝
迷惑顔のゆくえ 多喜二の生あくび    阪本きりり


肛門外科前に雪駄履いた人        井上 一筒
解体や言葉まみれの皮下脂肪       石田 柊馬
白夜にて火鉢に埋める三国志       富山やよい
新聞は入れないでください喉仏      くんじろう
天草四郎の体重分の負荷である      吉澤 久良


発育や寝乱れやすき体操着        きゅういち
水鳥の首の長さを刑事かな        石田 柊馬
みすみす酸化していくコトバ       吉澤 久良
虫ピンで止める生まれたばかりの火    井上しのぶ
A4にジミーと書いて置いてある     上野勝比古


番台を預かるなみだ目の巨人       きゅういち
寝ている猫の脳の野々山歯科の音     石田 柊馬
漂って舫ってこんぴらふねふね      壷内 半酔
両手を広げる廃屋の眼窩         山田ゆみ葉
さんざんなヒラメに弟のパジャマ     森  茂俊

10
祖父母のなりゆき 塩梅を分別      山口ろっぱ
肺気腫と診断された昼のバス       岩根 彰子
斬捨御免あとは名札にしまいます     兵頭 全郎
膝の水キシヲタオセと響動もして     石田 柊馬
混浴に浮くひと切れの政治学       壷内 半酔